光沢や反射、あるいは表面に特徴のない、フォトグラメトリでは苦手とされているプラスチックやガラスなど素材をフォトグラメトリする方法をまとめました。
以前Tweetの内容を深堀したものです。
もう一つのスプレーを使ったフォトグラメトリテスト。表面が石材のような質感になるというストーン調スプレー。#photogrammetry https://t.co/kmF0iUx2sE pic.twitter.com/MXx78i9Uyf
— masanaga (@tasklong) November 28, 2020
フォトグラメトリしづらい物
撮影者がある物体をフォトグラメトリしたいと思っても、通常のフォトグラメトリソフトには「物体」を認識する機能はついていません。
※AppleのObject Capture APIを除く
フォトグラメトリソフトは写真に写っている物を立体化しますが、光沢があって表面がツルツルしていたり、逆にマットが強すぎて陰影が少なかったり、透明で物体の輪郭がわかりづらい物はフォトグラメトリソフトは形として捉えることが出来ずに立体化されづらいとされています。
なので、表面を塗装して特徴を増やしてフォトグラメトリしやすくすると言う方法が一般的です。
ただし、塗装してしまうとその物の再利用が出来なかったり色や素材感などは取得できないので、そう言った点を理解した上での手法となります。
表面の塗装
先ほどの容器はあれで特徴が足りない、という事なので塗装をします。
今回は特徴を付けやすくするため3色使用しました。
このスプレーをこのように塗装します。
人間の目には形状の把握がし辛い模様になりましたが、フォトグラメトリソフトにとってどう見えるかが大事なのでこれでフォトグラメトリしてみます。
するとかなりうまくいきました!
ポイントとしては、粒子の大きさが細かくなりすぎず大きくなりすぎず満遍なく容器に塗布する事です。
通常のスプレーの粒子の大きさでは細かすぎで捉えきれず、またボテッと大きく垂れてしまうとその部分自体が「平面」として捉えられて正しく生成されない、さらに垂れた部分自体が凹凸として生成されてしまう原因になります。
これはこれでいい感じに出来ましたが、3色の塗り分けさらにスプレーでスパッタリングする技術が必要になりかなり手間が掛かり大変です…。
凹凸ができるスプレー
表面にフォトグラメトリしやすい様な特徴が塗装できるスプレーは何かないかと探してみた所、ストーン調スプレーと言うものがありました。
特徴の多い石はフォトグラメトリのモチーフとして良く使われるので、これは都合が良さそうだということで選んでみました。
ちなみに石の様になるスプレーにも色々と種類があるようで、当然ながらフォトグラメトリに使用する事を前提しているものではなく塗膜がかなり厚くなりディテールが潰れてしまう物もあるので注意が必要です。
このスプレーをプラスチック容器に塗布するとこのような感じになります。
近寄ってみるとこんな感じ。
これをフォトグラメトリするとこうなります。
エッジがだいぶ甘くなりましたがいい感じだと思います。
ちなみにこの撮影はすべてiPhoneで行っているおり、12メガピクセルしかないiPhoneの写真ではストーン調スプレーのザラザラとした表面の質感が生成されておらず、低い画素数が逆に功を奏した形となっています。
もし一眼カメラなど画素数の高いカメラを使った場合、ストーン調スプレーのザラザラとした質感も生成される可能性があります。
まとめ
- フォトグラメトリしづらい素材は、フォトグラメトリソフトが認識しやすくなるように特徴を増やす
- 人間に目には把握しづらいような模様の方がフォトグラメトリソフトには認識しやすい
- ストーン調スプレーはお手軽だが、表面のザラザラ質感には注意が必要。
おまけ
実は世の中にはすでにAESUBと言う3Dスキャン専用スプレーがあります。
これは一定時間でスプレーした面が昇華し、素材に影響を与えずにスキャンが出来るという特徴を持った製品です。
業務用ですが、一応個人でも購入できるようです。
ただし、これは3Dスキャンという物体にレーザーを当ててその反射で形状を取得する方式のためのスプレーです。
3Dスキャンもフォトグラメトリと同じ様に、光沢が強いものや透明な物などはスキャンすることが出来ないため、スプレーを塗布してレーザーの反射をしやすくすることが目的です。
そして今回の例の様に塗装してしまったら戻せない不可逆な方法が取れない場合に有効なスプレーですが、
一様にスプレーを塗布するため、フォトグラメトリに向いた特徴がこのAESUBで得られるかどうかはわかりません(あとそこそこ高い)